ご案内の文を書いて、いちばん最後にこう足したことはありませんか。
「どなたでも、お気軽にどうぞ。」
あの1行は、やさしさで書いた1行です。来てくれる人を少なくしたくないから、そう書く。僕も書きます。
ところが、あの1行を足した日から、申し込みがぱたりと止まることがあります。止めていたのは中身ではなく、入口の広さのほうでした。

「どなたでも」は、読む人の中で別の言葉に置きかわる
読む人の側に立ってみます。画面に「どなたでも大丈夫です」と書いてある。その人の頭の中では、こう置きかわります。
「ああ、これは私あてではないな。」
そのまま、静かに閉じられます。興味がなかったのとはちがいます。自分のことだと思えなかった、それだけです。

「あ、これ私だ」と思った案内文は、何がちがったのか
逆の経験も、たぶんあると思います。よそのご案内を読んでいて「あ、これ私だ」と思ったときには、もう申し込みを押していた。
あれは、書いた人が特別に文章がうまかったわけではありません。書いた人が、たった1人を思い浮かべて書いていた、というだけです。
その人の名前を出す必要はありません。年齢も、職業も要りません。要るのは、その人が何に困っていたか。その困りごとの、言い方のほうです。
ここでひとつだけ、気をつけることがあります。その困りごとを、自分の言葉にまとめ直さないでください。きれいに整えた言い方にすると、本人が読んでも自分のこととして受け取れません。言われたそのままの言い方で、置いておく。
お茶会のご案内で考えてみます。ひとつは「どなたでもお気軽にどうぞ」。もうひとつは「スマホで写真は撮れるのに、投稿の1行目が出てこなくて、下書きのまま消してしまう人へ」。
中身は、同じお茶会です。替えたのは、入口の1行だけです。

狭めると人は減るのか。増えるのは「仕分ける仕事」のほう
ここが、いちばん心配なところだと思います。僕の見てきたかぎりでは、減り方は心配しているのと逆でした。
広いままにしておくと、ちょっと見てみただけの人がぱらぱら来ます。来てくれること自体は、ありがたいことです。でも、話してみると、聞きたかったことがまるでちがう。
それが続くと、こちらは、来てくれた人を仕分ける仕事を抱えます。数が増えたのではなくて、仕事が増えただけなんです。しかもこれは、いちばん気を使う仕事です。「それはちがうんです」と伝えなければならない場面が増えるので。
そして、へとへとになった夜に思います。「やっぱり、私には向いていないのかな。」
向いていないのではありません。入口を、開けすぎていたんです。

狭めるのが怖い、その奥にあったもの
狭めるのが怖い理由は、もうひとつ奥にあります。お断りをした経験が、ないからです。嫌われるんじゃないか、と思ってしまう。
ここは、心がけでは動きません。言い方を一言、持っておくほうが早いです。
9月24日に、こんなことがありました。話していた相手が、自分のお知らせのページを作ってみたい、と言ったんです。僕は、作り方を教えませんでした。それをやっている人の会があるので、そっちへ行ってみて、と渡しました。
渡すのは、突き放すことだと思っていました。逆でした。渡せるのは、渡す先を知っている人だけなんです。
だから、お断りすることと、放り出すことは、ちがいます。私より上手な人がいるな、と思いながら引き受けるのと、「それはあの人が得意ですよ」と渡すのと。受け取る側にとって、どちらが親切かという話です。
入口を狭めるのが怖かったのは、狭めたあとに渡す先がなかったからです。渡す先がひとつでもあれば、入口は狭めていいんです。

AIに頼むと、ほぼ必ず「どなたでも」が出てくる
ご案内の文をAIに書いてもらうと、ほぼ必ず「どなたでも」が出てきます。AIは、いちばん無難なところへ寄るからです。
だから、頼むより先に、1行だけ渡しておきます。「去年来てくれた、あの人に向けて書いて」と先に伝える。その人がこぼしていた言葉を、2つか3つ、そのまま書き添える。
打つ言葉は、こんな感じで大丈夫です。
> お茶会のご案内を書いてください。来てほしいのは、投稿の1行目が出てこなくて、下書きを消してしまう人です。その人がよく言うのは、書こうとすると手が止まる、です。
これで返ってきた文には、たいてい「どなたでも」が入っていません。それだけで、返ってくる文の向きが変わります。

きょうの一歩:一言消して、1行入れる
手元のご案内の文を開いて、「どなたでも」「みなさん」「気軽に」のどれか一言を消してください。
消したところに、これまでに来てくれた人がこぼしていた言葉を、そのまま、1行入れる。書き直すのは、そこだけでいいです。
狭めても、人は減りません。減るのは、来てくれた人を仕分ける仕事のほうです。それでも手が止まるなら、足りないのは勇気ではなくて、渡す先です。

動画でも話しています
声と図で聞きたい方は、こちらからどうぞ。
- 0:00 「どなたでも、お気軽にどうぞ」と足していませんか
- 0:40 読んだ人の中では「私あてではない」に変わる
- 1:21 要るのは、その人の困りごとの言い方。まとめ直さない
- 1:59 狭めると、人は減るのか
- 2:46 狭めるのが怖い、奥にある理由
- 4:08 AIに頼むと、ほぼ必ず「どなたでも」が出てくる
- 4:51 きょうの一歩:一言消して、1行入れる
ひとりで考えると、たいてい広いほうへ戻ります。人の目を1つ借りに来てください。「おうちAI研究所」という名前のラインの部屋です。
気になったら、のぞいてみてください。


コメント