お客さまから預かった名前の並んだファイル。
「このお客さまのぶん、まとめておいて」と打ちながら、そのままAIの画面に落とす。
忙しい日ほど、手のほうが先に動きます。

きのう、そういう事故の発表がありました。
この記事を読んで僕が思ったのは、「これ、遠い会社の話じゃないな」でした。
起きたのは、集計をしていた手元だった
RIZAPグループが9月3日、子会社の社員が、自分で使っている外部の生成AIサービスに、お客さまの個人情報を誤ってアップロードしたとして謝りました(ITmedia NEWS・9月4日)。
載っていたのは、氏名、生年月日、性別、保険証の記号番号、メールアドレス。
人によっては住所と電話番号も。さらに、高血圧症や糖尿病などの疾患の情報も含まれていたそうです。
記事に書いてあるのは「データの集計作業中に発生」まで。
でも僕には、サボっていた人の話には読めませんでした。集計をしていた、その手元で起きています。
そして、ひとりで仕事をしている僕たちの机は、これとよく似ています。
お客さまの申込みリスト。生徒さんの相談メール。預かった名簿。
自分のものじゃないデータを、自分のパソコンで、自分の判断で扱っている。
消せたもの、消せなかったもの
AIに何かを貼るとき、たいてい心配するのはここです。
「これ、AIに覚えられちゃうんじゃないか」
今回、そこはちゃんと手当てされていました。
直後にチャットの履歴を消して、学習に使わない設定にした。AIの会社に問い合わせたところ、個人が分かる情報を含むファイルは学習には使わない、24時間以内に消したものも使わない、という回答が返ってきた。だから学習には使われていないだろう、と会社は判断しています。

終わらなかったのは、記事のうしろのほうでした。
AIの会社の役職員などが、その中身を見られる状態だった可能性については、いまも確認中。
履歴は消せました。学習の設定も止められました。
それでも、誰かの目に入ったかどうかだけは、こちらから消せません。
心配していた場所と、実際に残った場所が、ずれていたわけです。
覚える表を増やすのは、たぶん続きません
じゃあどうするか。よくある答えは、入れていいもの・ダメなものを覚えましょう、です。
もっともな答えに聞こえます。でも正直に言うと、あれは続きません。
理由は、仕事のデータっていつも半分だからです。
名前が入っていなくても、住んでいる町と年齢と持病が並んでいたら、その人だと分かってしまう。
これを毎回、頭の中の表と照らし合わせるのは無理です。忙しい日ほど、照らし合わせません。
物差しを1つに減らす
なので、貼る前に聞くことを1つだけにします。
> この画面、知らない人がうしろからのぞいても平気か。

覚えることはありません。
いま出ている画面を見て、はい、か、いいえ、で答えるだけです。
カフェで、隣の人がふっと画面をのぞきこんできた。
そのとき、さっと隠したくなるなら、貼らない。それだけです。
これが効くのは、AIに渡すというのが、じつは「向こうの会社のパソコンに置く」ことだからです。
今回、最後まで残ったのもまさにそこでした。人の目、という話に戻ってくる。だったら最初から、人の目で測ればいい。
手を動かすほうは、3か所だけ
物差しが決まったら、あとは手の動かし方です。3つあります。
1つめ。ファイルごと投げない。
「このファイル見て」でまるごと渡すのが、いちばん速いんですよね。速いから、みんなやります。
でも、AIに聞きたいことって、たいていファイル全部ではないんです。聞きたい数字だけを、手で写す。
2つめ。名前のならんだ列は、コピーする前に消す。
エクセルやスプレッドシートなら、その列を選んで、いったん消してからコピーする。元のファイルは保存しないで閉じれば、そのままです。
3つめ。人の相談ごとは、その人だと分かる部分を、そもそも書かない。
「50代で、名古屋で、パン教室をしている方が」と書きたくなるところを、「ある受講生さんが」に変えるだけ。

これでAIの答えがどう変わるかというと、ほとんど変わりません。やってみると、拍子抜けします。
今日の一歩
危ないのは、AIをたくさん使う人ではないと思うんです。
面倒なことを、早く片づけたい。その気持ちのほうです。
手を抜いたときではなく、手を早く動かしたいときに起きます。
だから、今日のうちに1つだけ。
仕事で使うAIを1つに決めて、その名前を、紙かメモ帳に書いておいてください。

今回の再発防止策は、会社が許諾していないAIは業務に使わない、でした。
ひとりで仕事をしていると、その許諾を出す人がいません。いないので、自分で1つ決めるしかない。
決めてあると、急いでいる日に、たまたま開いていた別のAIへ貼る、が起きなくなります。
動画で話しています
僕はこう思うけど、あなたはどう思う。
きょう最後にAIへ貼ったもの、うしろからのぞかれても平気なやつでしたか。
動画では、この話を最初から順番に話しています。
▼チャプター
0:00 まずは、預かった名前をそのまま貼っていないか
0:14 きのう起きたこと|私用のAIに顧客データ
0:59 これを、ひとりで仕事をする机に置き直す
1:17 心配していたのは「AIが覚えたか」だった
1:52 消せなかったのは「見られたかどうか」
2:19 覚える表を増やすやり方は、続かない
2:48 物差しを1つに減らす
3:26 手の動かし方は3つだけ
4:27 危ないのは、早く片づけたい気持ちのほう
4:40 今日の一歩|使うAIを1つ決める
5:55 おうちAI研究所のこと
こういう線引きって、正解が1つに決まらないから、ひとりだと決めきれないんですよね。
おうちAI研究所というところで、そのへんを持ち寄っています。気になったら、のぞいてみてください。

出典: ITmedia NEWS「RIZAP社員、私用AIに顧客の個人情報入力 氏名や疾患、保険証番号など……同社が謝罪」(2026年9月4日)



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