
洗い物をしながら、きょうもあまり進まなかったな、と思ったことはありませんか。
洗濯物をたたむ手はここにあるのに、頭の半分は、あしたの予定のほうにいる。晩ごはんを作りながら、早く片づけてパソコンに戻らなきゃ、と時計を見る。家で仕事をしていると、このうしろめたさが、1日じゅう、うっすらついてきます。
段取りが悪いのでも、がんばりが足りないのでもありません。時間の数え方が、少しだけ、ずれているんだと思います。
うしろめたさは、どこから来るのか

家で仕事をしている人の1日は、仕事と家事が細かく入りまじっています。メールを1通返して、洗濯機を回す。お客さんの資料を開いて、お米をとぐ。
そして夜、1日をふり返るとき、多くの人は、仕事をした時間だけを数えます。家事の時間は「仕事ができなかった時間」のほうに入る。家事をしている時間を、ぜんぶ差し引かれた時間として数えているから、お皿を洗っているあいだじゅう、何かを取りこぼしているような気がするんです。
でも、その時間、あなたはぼんやりしていたわけではありません。冷蔵庫をあけて、きょうはこれとこれで作れる、足りないのはにんじんだけ、と決めている。家族が帰ってくる時間から逆に数えて、火にかける順番を組んでいる。
台所でやっていることは、仕事の力

僕は講座で、「まずは、ひとりの人として何ができるかを考えてみよう」という話をしたことがあります。毎日ごはんを作っている。献立を考えられる。買い物に行ける。近所で、どこのスーパーが安いかを知っている。これ、ぜんぶ力です。しかも、献立を考えることも買い物も、いまはお金を払って頼めるサービスになっています。お金を払ってでも、やってほしい人がいる、ということです。
それなのに、長いあいだごはんを作ってきた人に「料理は得意ですか」と聞くと、得意です、と答える人はとても少ない。何と比べているのかというと、たいてい、超一流の料理人です。
僕も、台所ではえらそうなことは言えません。父子家庭になった最初の日、スーパーから帰ってきて、女性が150人ほどいるフェイスブックの集まりに書きこんだのが「じゃがいもは、冷蔵庫に入れるんですか」でした。それくらいの素人でした。それでも、毎日ごはんを作り続けてきたことは、いまの僕の自信の1つになっています。
家事を仕事の言葉に、AIで言いかえる

自分の家事を仕事の言葉に言いかえるのは、自分ではなかなかできません。当たり前すぎて、力に見えないからです。そこで、AIに頼みます。
- 頼み方: 「私がきょうやった家事を書きます。それぞれを、仕事でも役に立つ力に言いかえてください。大げさな言葉は使わないでください。」
- そのあとに、きょうの家事をそのまま並べます(冷蔵庫の残りで晩ごはんを決めた/子どもの持ち物を前の晩にそろえた/安いお店を比べて買い物をした)
返ってくるのは、たとえば「手元にあるものから段取りを組む力」「忘れものを先回りして防ぐ力」「比べて選ぶ力」といった言葉です。「大げさな言葉は使わないで」と添えるのは、立派すぎる言いかえが返ってくると、自分のことに思えなくなるから。返ってきた中から、そうそう、とうなずけたものを1つだけ覚えておいてください。
家事の途中で浮かんだ仕事は、どうするか

それでも、洗い物の最中に、仕事のことは浮かんできます。あのメール、まだ返していない。案内の文に、誤字がないか見ておかないと。抱えたまま手を動かしていると、また、うしろめたさが戻ってきます。
そこで、問いを1つだけ持っておきます。「これは、誰がやっても、同じ結果になるか」。
僕も、自分のAIに仕事を頼むとき、この線で分けています。パソコンの設定画面に決まったことを入力するような作業は、聞かずにやっておいてもらう。何を作るか、誰に向けるか、お金を使うかどうか。答えが人によって変わるものだけ、僕に聞いてもらいます。
- 同じ結果になるもの(たとえば): 案内の文の誤字さがし/届いたお問い合わせを日付の順に並べる/来週の予定を1枚の表にまとめる → AIに渡す。頼み方は「次の文の、誤字と脱字だけを教えてください。言い回しは変えないでください。」で足ります
- 人によって答えが変わるもの: お客さんへの返事の最初のひとこと/値段をいくらにするか/そのお誘いを受けるかどうか → AIに渡さず、あなたの手元に残す
同じなら、手をふいてスマホからAIに頼む。変わるなら、座ったときに考える、とだけ決めておく。それだけで、頭の中に抱えている仕事が1つ減ります。この問いは、家事のほうにも使えます。苦手なことは、お金を払って人にやってもらっていい。自分の手でやりたい家事は、胸をはって自分でやればいい。どちらを選んでも、差し引かれた時間ではありません。
今日の一歩

きょうの家事の途中で、頭に浮かんだ仕事を1つだけ選んでください。そして「これは、誰がやっても同じ結果になるか」と自分に聞いてみる。同じだったら、その場でAIに頼む。ちがったら、あとで考える、と決めて家事に戻る。やるのは、それだけです。
お皿を洗っている時間は、仕事が止まっている時間ではありません。あなたの手が、毎日の段取りをきたえている時間です。僕はこう思うけど、あなたはどう思いますか。
動画では、AIへの頼み方を声でも聞けます。


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