
押し入れの奥に、開けていない段ボールが、たぶん1つあります。
昔のノート、手帳、写真。今度片づけるときに捨てよう、と思っているやつです。
きょうは、その箱を捨てる前に、聞いてほしい話をします。
発信をやってみたい、という相談をよく受けます。そのときにいちばん多く返ってくるのが、この言葉です。
「でも、私には、人に出せるものが何も無いんです」
僕はこれを聞くたびに、ちがうところが気になっています。出せるものが無いのではなくて、出す前に、自分の手で捨てているんじゃないか、ということです。
「もう古いから」で、値打ちを自分ひとりで決めている

古い記録を処分するとき、僕たちは、ある一言で決めています。
「もう古いから」
すごく自然な言い方に聞こえますよね。でも、よく見るとおかしなことをしています。
古い、というのは、値打ちの話ではありません。時間の話です。いつのものか、を言っているだけで、いいか悪いかは、ひとことも言っていない。
なのに僕たちは、古い、という時間の話を、要らない、という値打ちの判定にすり替えています。しかも、その判定を、自分ひとりでやっています。誰にも見せないまま、資源ごみの日に出しています。
もったいないのは、中身が消えることではありません。いつのものか、が消えることです。
昔の記録には、消印みたいなものが押してある

このノートは、あの年のもの。この手帳は、下の子が小学校に上がった年のもの。
中身は、あとからでも書けます。思い出せば、いくらでも書き直せます。
でも、いつのことだったか、だけは、買い直せません。そこが、いちばん強いところです。
僕がPTAで8年やっていたこと

僕は、PTAの会長を8年やりました。長いですよね。自分でも、なんでそんなにやったんだろう、と思います。
その8年のあいだ、卒業式でも、入学式でも、あいさつの台本は、一応は書いていました。でも、そのとおりに読んだことは、ほとんどありません。前に立って、その場で話していました。
当時の自分は、これを「段取りが好きなだけの、変わったお父さん」くらいにしか思っていません。まわりの人からも、たぶん、そう見えていたと思います。
いま、僕はこの話を人前でしています。できるのは、8年ぶんの中身を、いまでもはっきり言えるからです。何年から何年まで、どの学年で、どんな行事があったか。そこが、ぼんやりしていません。
ここがぼんやりしていたら、この話は、たぶんできません。「なんとなく長くやってました」で終わります。なんとなく、は、人に渡せないんですよ。
世間話のつもりだったものが、いちばん正確だった

もう1つ、同じ形の話があります。
PTAのメンバーに、当時つとめていた会社の商品のサンプルを、持っていっていたんです。会議のあとに「これ、どうですか」と出して、聞いていました。
気心が知れているので、遠慮がありません。「こんなの売れないでしょ」と、はっきり返ってきます。正直、へこみます。へこむんですけど、こっちのほうが、答えとしては正確でした。
これも、当時はただの世間話でした。仕事のうちには数えていません。
でも、いつ、誰に、何を出して、何と言われたか。そこが残っていたので、いま話せています。
あなたの押し入れに入っているのも、たぶん、同じものです。子どもの行事をやりくりした予定表。役員を引き受けた年に作った資料の束。同じことを何度も聞かれるから、自分用に作ったやり方の紙。
それぞれに、いつのものか、が付いています。その「いつ」が、あとから買えないものです。
取り出す手順は3つだけ

1つ目。 押し入れか、引き出しを1つだけ開けて、古い記録を1つ、机の上に出します。読まなくていいです。中を見なくてもいいです。出しておくだけ。それだけで、きょうは十分です。
ここで、捨てないでください。読めないから、古いから、と処分してしまう人が、いちばん多いところです。
2つ目。 その記録に、ふせんを1枚だけ貼ります。書くのは、いつのものか、それだけです。何年ごろのものか。その年に、自分に何があったか。役員をやった年。引っ越しをした年。介護が始まった年。正確じゃなくて大丈夫です。だいたい何年ごろ、で十分です。
3つ目。 ここで、はじめてAIの出番になります。さっき貼ったふせんの言葉を、そのままAIに渡して、こう聞きます。
「この年に、私はどんな仕事をしていたことになりますか」
言い方は、これだけで通じます。かしこまった書き方は要りません。
渡すのは、ふせん1枚ぶんだけ

ここで、大事な線を1本だけ引かせてください。
渡すのは、そのふせん1枚ぶんの言葉だけです。箱ごと渡そうとしないでください。写真に撮って全部読ませなくていいですし、そもそも、それをやろうとすると手が止まります。
ふせん1枚で足ります。いつ、何があったか。それだけで、返事は返ってきます。
すると、自分では、まず出てこない言い方で返ってきます。「人の前で場をまわす仕事です」とか「お客さんに直接聞く仕事です」とか。
はじめて聞くと、たいてい「そんな大げさな」と思います。その、そんな大げさな、と思ったところが、たぶん、あとから買えないほうです。
恥ずかしいものほど、捨てないで

もう1つだけ、正直に言っておきたいことがあります。
出してきた記録を見ると、たいてい、恥ずかしくなります。字が汚い。考えが浅い。今ならこんな書き方しない。
これは僕もそうです。昔の自分が書いたものは、正直、あまり見たくありません。
そして、恥ずかしいものほど、人はさっと捨てます。見なかったことにして。
でも、その恥ずかしさは、あなたがそこから動いた証拠です。同じ場所にいたままなら、恥ずかしくもなりません。
だから、恥ずかしいと思ったものほど、捨てないで、机に出しておいてほしいんです。
まとめ

古い、と、要らない、は、別のことばです。古い、は時間の話で、要らない、は値打ちの判定です。この2つを、ひとりでくっつけないでください。
中身は、思い出せば書けます。あとからでも足せます。でも、いつのことだったか、だけは、買い直せません。だから箱のほうが強いんです。
きょう持って帰ってもらうのは、これ1つです。捨てる前に、1つだけ机に出す。読まなくていいし、まとめなくていいし、発信しなくていい。出しておくだけです。
そこにふせんを1枚貼れば、あしたの材料になります。
僕はこう思うけど、あなたはどう思う。
動画では、この3つの手順をもう少しゆっくり話しています。
YouTubeで説明してます
よかったらみてください
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出てきた1つを「これは残しておく値打ちがあるのかな」と自分だけで決めるのは、けっこう難しいです。おうちAI研究所というオープンチャットで、そういうものを見せ合っています。
気になったら、のぞいてみてください
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