
AIに「うちのお知らせを書いて」と頼んだのに、返ってきたのは、どこかよそのお店の文章。
文章は上手なんです。ただ、そこに出てくるお店が、うちじゃない。
そういうことが続いている方に、きょうは原因をひとつだけお渡しします。
結論から言うと、あなたの説明が下手だったからではありませんでした。
AIが読めなかったのは、社内だけで通じる言葉だった

きのう、家具のニトリの記事が出ていました(ITmedia ビジネスオンライン 2026年8月24日)。AIに社内の数字を聞けるようにしようとしたら、途中で壁にぶつかった、という話です。
僕はその会社に27年いたので、他人ごとに思えませんでした。
壁になったのは、技術でも予算でもありません。社内用語でした。
会社の中には、売上や在庫を収めた表がたくさんあります。分析に使う主なものだけで、2600本を超えていたそうです。
そこにAIを入れて、話しかけるだけで数字が出るようにしたかった。ところが、うまくいきません。
理由は、表につけられた名前でした。ある列の名前は、アルファベットを縮めて並べただけのもの。読み方も分かりません。記号が並んでいるように見えます。
でも社内では、これで通じていました。意味は「納品先会社区分」。納品先の会社を分けるための列、ということです。
人間でも、はじめて見たら読めません。AIにも、読めませんでした。AIの頭が悪かったわけではないんです。習っていない言葉だった、というだけです。
あなたのお店にも、あなたの言葉がある

これは、会社の大きさの話ではありません。
たとえば、あなたが「はじめてさん」と言うとします。あなたの中では、まだ一度も来たことのない方、と意味が決まっています。
「いつものやつ」も、「仕込み」も、そうです。「奥のお部屋」も、そうかもしれません。
あなたの頭の中では、意味がぴったり決まっている。でもその決まりは、あなたの外には出ていません。
AIは、世間で使われている言葉なら知っています。でも、あなたのお店で毎日使われている言葉は、まだ一度も見たことがない。
だから、それらしい、よそのお店の文章が返ってくるんです。
ニトリがやったのは、作文だった

では、その会社はどうやって直したのか。
新しい機械を入れたわけでも、むずかしい技術を使ったわけでもありません。
表についている「説明」という欄に、抜けている意味をひたすら書いたんです。
この表は何のためのものか。この列の名前は、何を指しているのか。
社内でしか通じない「伝票種別」という言葉にも、レジでの決済、注文と取り寄せ、キャンセル、と、ひとつずつ意味を書き足しています。
情報システム改革室の小林さんは「最初は説明に何でも書いてしまえばよい」と勧めています。
そして講演の最後に、こう言ったそうです。
> やったことは、データの説明を作文したことだけ。技術を持つ限られた人にしかできないことではない。
作文、です。
そのあと、こういう聞き方ができるようになりました。「赤羽店の寝具の売上高を出して」。
ぱっと見ると、ふつうの頼みごとに見えます。でもこの短い中に、その会社でしか通じない言葉が入っています。それでも答えが返るようになったのは、意味を先に書いて置いたからです。
全部やらなくていい。五つでいい

ここで、たいていの人がこう思います。「うちの言葉、数えたらきりがないよ」と。
大丈夫です。同じ記事の中で、小林さんはこうも言っています。
全部を網羅する必要はない。よく使う上位5つくらいでも、効果は確かめられた。
2600本ある会社の人が、5つでいい、と言っているんです。
選び方は簡単で、ここ一週間でAIに頼んだことを思い出すだけ。その中に出てきた言葉で、外の人に説明したことが一度もないもの。それが、うちの言葉です。
一行の作り方

選んだら、一行だけ書きます。形は決まっています。
> うちで「◯◯」というのは、△△のことです。
さっきの例なら、こうなります。
> うちで「はじめてさん」というのは、まだ一度も来たことのない方のことです。
これを、頼みごとの前にくっつけて送ります。
> うちで「はじめてさん」というのは、まだ一度も来たことのない方のことです。そのはじめてさんに配る、うちの使い方の紙を作ってください。
足したのは、意味の一行だけです。説明を長くしたわけではありません。
長い説明と、言葉の意味は、別ものです。長い説明は、読む相手を疲れさせます。意味の一行は、相手をあなたの側に立たせます。
自分では、丸がつけられない

ただ、ここに小さな落とし穴があります。
うちの言葉は、自分にはふつうの言葉に見えるんです。毎日使っているので、特別な言葉だと思っていません。
だから自分で探そうとすると、たいてい見つかりません。
そういうときは、AIに探してもらいます。送る文は、これだけです。
> いま送った文の中で、外の人には通じない言葉に線を引いてください。そのあと、意味が分からないものを私に聞いてください。
返ってきた質問に、ひとつずつ答えていきます。答えたぶんだけ、あなたの言葉の帳面ができていきます。
きょうの一歩

これから一週間、AIに何か頼むとき、その前に一行だけ足してみてください。
> うちで「◯◯」というのは、△△のことです。
一行です。それ以上は、なにも足さなくて大丈夫です。
AIから返ってきた、よそのお店みたいな文章。あれは、あなたの言葉が足りなかったからではありません。あなたの仕事の中に、あなたにしか意味の決まっていない言葉があった。それだけです。
2600本の表を持っている会社が、最後にやったのは、作文でした。私たちがやることも同じで、ちがうのは本数だけ。向こうは2600本、こちらは5つです。
動画では、画面つきでもう少しゆっくり説明しています。
YouTubeで説明してます
よかったらみてください
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うまくいかない場面を持ち寄れる場所として、おうちAI研究所という部屋も開けています。何かを買う必要はありません。
気になったら、のぞいてみてください
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参考: ITmedia ビジネスオンライン 2026年8月24日「『社内用語』がAI分析を邪魔する……ニトリが“力技”で解決 「赤羽店の寝具の売上高を出して」可能にできたワケ」


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